こんにちは、らじおです。

みなさん、
「なんか今日の自分、ちょっといいかも」
って瞬間、ありませんか。

服がハマった日とか、
コーヒーが妙においしい朝とか、
夜道を歩きながら聴いてる音楽がやたら似合ってしまうときとか。

ああいう瞬間って、ちょっとだけ自分に酔えますよね。
まあ、できれば人にはあまり見られたくないやつですが。笑

ぼくにとってそのスイッチのひとつが、
スティーヴィー・ワンダーの『インナーヴィジョンズ(Innervisions)』です。

Innervisions

 

これを聴くと、不思議と

「自分、少しだけ上品な大人に近づいたのでは?」

という錯覚が起きます。

かなり都合のいい錯覚です。

 

でも、音楽ってたぶん、そういうものでいいんですよね。

ぼくがこのアルバムに出会ったのは、大学生の頃でした。

当時の自分は、
オアシスブラーみたいなUKロックをよく聴いていて、
ギターがジャーンと鳴っていればだいたい正義、みたいな時期でした。

 

あの頃って、音楽にも若さがあるんですよね。

少し雑で、少し衝動的で、
でもそれがやたらかっこよく感じる時期。

だから当時のぼくにとって、スティーヴィー・ワンダーは
正直に言えば、ちょっと「大人すぎる」存在でした。

 

もっと言えば、
「これはオジサンが聴く音楽では…?」
くらいに思っていました。

 

若い頃って、ほんの少し背伸びした世界を、
いったん雑に“渋すぎる棚”に置きがちなんですよね。
あれ、もったいない。ほんとに。

 

そんなぼくが『インナーヴィジョンズ』を手に取ることになったのは、新宿のタワーレコードでした。

その日、試聴機の前にいたのは、
スーツをビシッと着こなした、なんとも上品なおじさん。

もうね、ただの“スーツ姿の人”じゃないんです。

「この人、ネクタイを締める所作まで音楽性ありそう」
みたいな雰囲気の人。笑

その人が、あるCDをかなり真剣に試聴していたんです。

 

で、気になってしまったんですよね。

「そんなセンスのあるおじさんが、
いったい何を聴いてるんだ…?」って。

今思えば、ぼくはその音楽そのもの以上に、
“その人がまとっていた空気”に惹かれていたのかもしれません。

そして、そのおじさんが去ったあとに試聴したのが、
スティーヴィー・ワンダーの『インナーヴィジョンズ』でした。

 

で、聴いてびっくりしたんです。

「うわ、これは…上品だ」

語彙が雑ですみません。

でも、あのときの感覚って本当にそんな感じでした。

 

それまで自分が夢中になっていた、
少年っぽさや衝動をそのまま鳴らす音楽とは、
明らかに手触りが違ったんです。

もっと練られていて、
もっと奥行きがあって、
もっと“余裕”がある。

音がちゃんと大人なんですよね。

 

でも、決して難しくて近寄りがたいわけじゃない。
むしろ温度がある。
ちゃんと人間くさいのに、品がある。

これが、ものすごく新鮮でした。

 

そして心の中で思いました。

「オジサーン、そりゃそんなに上品にスーツ着こなせるわ…」

完全に謎の納得です。笑

 

『インナーヴィジョンズ』には、
「ハイアー・グランド(Higher Groung)」や「汚れた街(Living for the City)」みたいな
強い曲も入っています。

 

もちろんそういう代表曲も素晴らしいんですが、
ぼくが特に好きなのは、
「ゴールデン・レディ(Golden Lady)」です。

 

この曲を聴くと、
空気の粒がちょっと細かくなる感じがするんですよね。

ピアノのあたたかさとか、
ヴォーカルの柔らかさとか、
音の輪郭がぜんぶ丸くて、でも甘すぎない。

 

若い頃にはわからなかった
“いい音楽に包まれる気持ちよさ”みたいなものを、
この曲は静かに教えてくれる気がします。

 

そして不思議なことに、
こういう音楽を聴いているときって、
実際の自分以上に、自分を少しだけ良く感じられるんですよね。

 

別に何かを成し遂げたわけでもないのに、
「今日はちょっと丁寧に暮らせている気がする」みたいな。

部屋が散らかっていても。
洗濯物がソファに乗っていても。
現実はそこまで上品じゃなくても。笑

 

それでも、
耳から入ってくる音楽ひとつで、
人は少しだけ“なりたい自分”に近づける。

これって、けっこうすごいことだと思うんです。

今思い返すと、
あのときぼくが『インナーヴィジィンズ』に惹かれたのは、
単に音がよかったからだけじゃなかった気がします。

たぶんあの頃のぼくは、
あのタワレコにいた
“上品なおじさん”みたいな大人に、
ちょっと憧れていたんですよね。

 

ちゃんと年齢を重ねていて、
ちゃんと自分の好きなものを知っていて、
しかもそれを、
いかにも語らずに自然に身につけている感じ。

 

あれ、かっこいいんですよ。

 

若い頃って、
「大人になる」ことを少し警戒しながら、
でも心のどこかではかなり憧れていたりする。

 

音楽って、その憧れの入口になることがあるんだと思います。

そんなことを考えると、たまに思います。

自分は今、あの頃に見た“上品なおじさん”に、
少しは近づけているんだろうか。

正直、怪しいです。笑

 

生活はわりとバタついてるし、
内面はそこまで常に落ち着いていないし、
気づけばスーパーで安い納豆を真剣に比較してるし。

でも、
昔より少しだけ
「こういう音楽が似合う人でいたい」
と思えるようにはなった気がします。

それって案外、悪くない年の重ね方かもしれません。

若い頃に夢中になった音楽もいい。
今の年齢だからしみる音楽も、もちろんいい。

どっちもあるから、
音楽好きの人生ってちょっとお得です。

そして、
“自分の世界にちゃんと浸れる一枚”を持っている人は、
日常の解像度が少しだけ上がる気がします。

疲れた日でも、
気分がパッとしない夜でも、
一枚のアルバムが部屋の空気を変えてくれることがある。

スティーヴィー・ワンダーの『インナーヴィジョンズ』は、
ぼくにとってそんな一枚です。

もし最近、
「なんか気分がささくれてるな」とか
「ちょっと大人の空気を補充したいな」と思ったら、
こういうアルバムを一枚、そっと再生してみるのもいいかもしれません。

少なくとも、
“少し上品な自分”の気分だけは味わえます。

かなりおすすめです。笑

ABOUT ME
らじお
40代半ば、一人娘の父です。 メンタル心理カウンセラー資格所持。 就職氷河期のあと、約10年ほど海外を放浪。 その頃から読み始めた自己啓発本は1000冊以上になりました。 二十数年続く自分探しの旅、今日ものんびり進行中です。